
クレー射撃とは
クレー射撃とは機械によって放出された直径11cmのフリスビーのような形をした素焼きの皿(クレー)を散弾銃で撃ち落とす競技です。競技に使われる銃は本物の散弾銃で全国にある公安委員会から許可を受けた射撃場で競技を行うことができます。ラウンド形式で進められ1ラウンド25枚のクレーをどれだけ撃ち落とせたかによって勝敗を決めます。大会などではこれを4~5ラウンド行いその合計スコアによって勝敗を決めます。クレー射撃競技には様々なルールの下、複数の種目があり国内で最も競技人口の多い種目が「トラップ」次いで「スキート」その他に「ダブルトラップ」「トリプルトラップ」「フィールド」などの種目があります。
クレー射撃の歴史
クレー射撃の出自は18世紀ヨーロッパ、イギリスであるといわれています。元々狩猟が貴族の嗜みとして親しまれていたイギリスではその腕を競うために生きた鳩を飛ばして銃で撃ち落とすというゲームが貴族の間で行われていました。それがクレー射撃の起源といわれています。その後生きた鳩の代わりに素焼きの粘土でできた標的であるクレーが発明され、そこから現代クレー射撃の歴史が始まりました。射撃競技は1896年の第一回アテネオリンピックからありますが、クレー射撃が採用されたのは第二回のパリオリンピックからでした。当時はまだ生きた鳩を撃ち落とす種目が存在していましたが1921年には全面禁止となり名実ともにクレー射撃に使用する標的はクレーのみとなりました。
日本におけるクレー射撃の歴史は、大正時代まで遡り1914年に日本で最初のクレー射撃の大会が行われた記録があります。
クレー射撃はその歴史的背景からオリンピックなどでは欧米諸国が強豪国となっています。日本のメダルは1992年のバルセロナオリンピックで取った男子トラップ種目での銀メダル一個のみです。

競技に使われるクレー
中央に鳩のマークが描かれている
トラップ射撃
日本においてもっともポピュラーな競技で、学生シューターの中でも一番人口が多いのがこのトラップ射撃です。最も歴史の長い競技であり、生きた鳩を撃っていた頃の伝統を色濃く残しています。横一列5つの射台(銃を撃つために区切られた四角い枠)に射手が並び射手の手前に設置された機械から左、まっすぐ、右の3方向の内のどれかがランダムに放出さるので撃ち落としていきます。これを5つの射台をまわりながら繰り返していきます。

トラップ競技は1枚のクレーに対して2発までの発砲が認められています。そのため一発目でクレーに当てることができなくても二発目で当てれば得点となります。シンプルな種目ですが、それ故に奥が深い種目でもあります。使用される弾の種類は24gの7 1/2号(通称、ナナハン)と呼ばれる弾でスキート競技等に使われる弾と比べると散弾の粒が大きいことが特徴として挙げられます。
左の写真はトラップ射撃の練習風景ですが、ご覧のとおり白線で区切られた緑の枠の射台に射手がそれぞれ立っています。どの種目でも同じですがこの枠の外で弾を込めたり、銃を撃ったりすることはできません。またこれもどの種目でも同じですが、手前にあるマイクにクレーを放出する合図を掛け声で送らないとクレーは放出されません。
スキート射撃

1920年代にアメリカで考案され発展した種目です。国内でトラップに次いで競技人口が多く、オリンピックでもトラップとともに正式種目として採用されています。
半円形をした射場にそれぞれ1番から8番まで番号が付けられた射台が設置され、それらを巡回しながら1ラウンド25枚のクレーを撃ちます。左右にはそれぞれ一つずつ放出機が設置され、射手から見て右側の放出機を「プール」左側を「マーク」と呼びます。トラップ射撃と違いスキート射撃は銃を構えてからクレーを放出するのではなく腰の位置に銃を下げておき、クレーの放出と同時に銃を構える「拳銃(キョジュウ)」という動作が必要になってきま
す。またスキート射撃にはダブルといって左右両放出機から同時に2枚のクレーが放出されることがあります。
スキート射撃は一つのクレーに対して一発の発砲しか認められていないので、基本的に一発勝負です。逆に言えばトラップ射撃程の弾の消費がないので弾代が安く済むという利点があります。その他この種目は撃つ射台によっては自分に向かってくるクレーを撃ち落とすことがあるので、クレーの破片が射手に当たることがあります。そのため射手は基本的に帽子とシューティンググラスをすることがマナーとなっています。様々な角度からクレーを撃つスキート射撃はルールや技術の複雑さから競技人口はトラップなどと比べると少ないですが、その分ダイナミックな射撃ができることが特徴です。狩猟などをするハンターなどが練習としてこの競技をしていることが多いです。(上記写真はスキート射場、手前の緑の枠が5番射台 奥に見える緑の建物がプール側の放出機)
ダブルトラップ射撃
トラップ射撃の発展型の競技であり基本的なスタイルはトラップ射撃と同じですが、その名の通り一度に2枚のクレーが同時に放出されます。現在オリンピックでは男子種目のみ行われており女子種目はありません。日本国内では選手層は非常に薄くかなりマイナーです。
トリプルトラップ射撃
これもその名の通り一度に3枚のクレーが同時に放出される競技です。上記三競技と違いオリンピック種目ではなく比較的新しい発展途上の競技でもあります。そのためトリプルトラップ射撃ができる射撃場は全国でも非常に限られてきます。競技の特性上、2発までしか装填できない上下二連式等の銃は使えず自動銃のみが使える競技になっています。
フィールド射撃
トラップ射撃やスキート射撃など複数の競技を同時に行う複合競技です。これはスポーツとしてではなく主に様々な状況下で射撃を行うハンターの育成を目的とした競技です。そのためフィールド射撃の大会はクレー射撃協会ではなく猟友会主催で行われています。